フレンチのお品書きには、カタカナの言葉がいくつも並びます。オードヴル、アミューズ、ミニャルディーズ。読み方はわかっても、どんな料理なのかまでは思い浮かばない、という方も多いのではないでしょうか。
私たちのおまかせコースにも、この三つの言葉が登場します。ここでは辞書で意味をたどりながら、それぞれがコースのどこに置かれる一皿なのかをまとめました。言葉の意味がわかると、運ばれてくるお皿の見え方も少し変わるはずです。
オードブルとは。「作品のほかに」という名をもつ前菜
オードブルは、フランス語の hors-d’oeuvre から来た言葉です。小学館の『デジタル大辞泉』は、「作品のほかに、の意」としたうえで、「食欲を促すため、食事の最初に出す軽い料理」と説明しています。日本語でいえば前菜にあたります。
作品のほか、とは不思議な名前です。講談社の『世界の料理がわかる辞典』では、「直訳は『作品のほかに』となり、献立外の料理の意」とされています。主役となる料理の、少し外側に置かれた一皿。そう考えると、名前と役割がつながって見えてきます。
平凡社の『改訂新版 世界大百科事典』によれば、オードブルには冷製と温製があります。あとに出される料理と重ならないようにするのが基本で、続く料理への期待をもたせる役割も重視される、と書かれています。
表記にも揺れがあります。辞書には「オルドーブル」「オールドゥーブル」といった書き方も載っています。当店のお品書きでは「オードヴル」と書いていますが、指しているものは同じです。
アミューズとは。最初の一口で、口を楽しませる
アミューズは、アミューズブーシュ(amuse-bouche)を縮めた呼び方です。『世界の料理がわかる辞典』は、「口を楽しませるもの」という意味で、アミューズグールともいう、と説明しています。
前菜が、名前のうえでは献立の外に置かれた料理なら、アミューズはさらにその手前にある、小さなごあいさつのような一品です。席に着いて、これから何が出てくるのだろうと思っているところへ、最初の一口が届きます。
当店では、夜のフルコースと、外部の予約サイトからのご予約限定のコースがこのアミューズから始まり、そのあとに前菜が二品続きます。ほかのコースは、冷製と温製のオードヴル、あるいはオードヴル一皿からのスタートです。その日に森や畑から届いたものの気配を、はじめの一口で感じていただけたらと考えています。
ミニャルディーズとは。食後に添える小さなお菓子
ミニャルディーズ(mignardise)は、コースの終わりに出てくる言葉です。フランス語の辞書ラルースは、この語の意味の一つとして、食事の終わりに盛り合わせで出される小さな菓子を挙げています。
近い言葉に、プティフール(petit four)があります。『精選版 日本国語大辞典』は「小さいかまど」の意とし、「一口で食べられる小さなケーキ」と説明しています。『デジタル大辞泉』では、フランス料理でデザート用に出される、一口サイズの小さな菓子です。
当店では、ランチとディナーの一部のコースで、デザートのあとにミニャルディーズをお出ししています。食事の最後を締めくくる一品なので、味だけでなく、目でも楽しんでいただけるよう器や盛り付けに気を配ってきました。
言葉の器に、信州の季節を入れる
オードヴル、アミューズ、ミニャルディーズ。どれもフランス料理の言葉ですが、私たちのコースでは、その中に何を入れるかを信州の季節が決めています。献立を先に決めず、その日に届いた食材を見てから一皿の形を考えているからです。
春は山菜、夏から秋は天然きのこ。畑からは、生産者さんが育てた高原の野菜が届きます。十月に入り、今年の天然きのこの季節も終わりが見えてきました。山を歩くと、場所によっては足もとに枯れ葉が落ちはじめています。
同じ「温製オードヴル」という言葉でも、春に出すものと秋に出すものでは中身が違います。言葉はそのままで、中に入るものだけが季節とともに入れ替わっていく。お品書きの言葉は、信州の四季を受けとめる器のようなものだと思っています。
フランス料理の言葉と、信州の森や畑から届くもの。メリ・メロだから、この組み合わせになる。
意味を知ってから、一皿ずつ味わう
言葉の意味を知らなくても、料理はおいしく召し上がっていただけます。それでも、いま届いたのがアミューズだとわかれば、ここからコースが始まるのだと気持ちが整います。ミニャルディーズが出てきたら、食事もそろそろ終わりです。
どのコースにどの言葉が並ぶかは、おまかせコースと料金に載せています。季節ごとに届く食材のことは信州の食材に、その週の一皿の様子はシェフの独り言に書いています。
なお、冬のあいだ(十一月ごろから四月上旬ごろの予定)はランチをお休みし、夜だけの営業になります。年によっては、夜の開店が十八時になることもあります。時期は前後しますので、決まりしだいこのホームページでお知らせします。
アレルギーや苦手な食材は、ご予約のときに必ずお知らせください。おまかせコースのため、当日のご対応はいたしかねます。
お品書きの言葉で気になるものがあれば、どうぞ遠慮なくお尋ねください。カタカナの一行ずつに、その日の信州が入っています。
※ 言葉の意味は、小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』、講談社『和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典』、平凡社『改訂新版 世界大百科事典』(いずれもコトバンク掲載分)と、フランス語辞典 Larousse(ラルース)の「mignardise」の項(いずれも2026年10月閲覧)を参考にしました。