本文へスキップ
KARUIZAWA / SHINSHU FRENCH
Column

軽井沢と信州の、読みもの

リエットとは。パテ・テリーヌとの違いを、信州・軽井沢のフレンチから

リエットとは。パテ・テリーヌとの違いを、信州・軽井沢のフレンチから

フレンチのお品書きに「リエット」と書かれていて、パテやテリーヌと何が違うのか、迷ったことはないでしょうか。どれも前菜に並ぶことが多く、見た目も少し似ています。名前だけでは、どんな料理なのか想像しにくい言葉です。

この記事では、辞書の説明をたよりに、三つの言葉がそれぞれ何を指しているのかを整理しました。後半では、私たちがコースでお出ししてきたリエットとパテの話もいたします。

リエットとは。肉を脂で煮込み、ほぐしてペーストにしたもの

リエットはフランス語の rillettes から来た言葉です。コトバンクで『デジタル大辞泉』(小学館)を引くと、豚やガチョウなどの肉をラードで煮込み、ペースト状にしたものとされています。パンやクラッカーに塗って食べる、とも添えられています。

講談社の料理辞典は、もう少し作り方に寄った書き方です。豚やがちょうの肉を、香草や香辛料とともに時間をかけて煮込みます。それを細かくほぐして脂肪と混ぜ、ペースト状に仕上げる。そう説明されています。

同じ辞典には、一種の保存食として作られてきたこと、容器に入れて表面をラードで覆っておくことも書かれています。肉を切り分けて食べるのではなく、ほぐして塗る。そこがリエットのいちばんの特徴だと考えています。

昔の台所では、肉を長く食べつなぐための仕事でもあったのでしょう。ただ、ご家庭で作って日持ちさせるとなると、衛生面の注意がたくさん要ります。辞書の保存のくだりは、料理の成り立ちを知る話として読んでいただければと思います。

パテとは。もとはパイ生地で包んで焼いた料理

パテは pâté と書きます。『改訂新版 世界大百科事典』(平凡社)の説明では、もともとは小麦粉を練った生地で型を作り、その中に肉や魚を入れた料理でした。生地のことはパート(pâte)と呼びます。

同じ事典は、やがて本来の意味を離れて、中に入れるもの自体もパテと呼ぶようになったと説明しています。生地を使わないパテもあり、テリーヌもその一つとして挙げられています。

講談社の料理辞典でも、詰め物をパイ生地で包むか、耐熱の容器に詰めてオーブンで焼いたものとされています。広い意味ではテリーヌを含むこともある、という一文もあります。さらに、肉や魚から作るペースト状の食品を指すこともある、と説明されています。

『デジタル大辞泉』の説明は短く、一つめに肉入りのパイ、二つめに肉をすりつぶして調味し、蒸し焼きにした料理を挙げています。パテは、指す範囲がいちばん広い言葉と言えるでしょう。

テリーヌとは。もとは器の名前

テリーヌ(terrine)は、もともと料理ではなく器を指す言葉でした。『デジタル大辞泉』にも、本来はその器をいう語だと書かれています。器は陶製で蒸し焼きに使うもので、講談社の料理辞典によると、ふたがつき、多くは長方形です。

料理としてのテリーヌは、辞書の説明では、肉や魚、野菜などをすりつぶして味をととのえ、この型に詰めてオーブンで蒸し焼きにしたものです。型には豚の背脂やバターを敷いておきます。冷ましてから切り分け、冷たい前菜にすることが多い料理です。

器の名前が、そのまま料理の名前になった。そう覚えておくと、ほかの二つと区別しやすくなります。

三つの違いを、ひと言で整理すると

辞書の説明を並べると、おおまかには次のように分けられます。

  • リエット … 肉を脂で煮込んでほぐし、ペースト状にしたもの。塗って食べる
  • パテ … もとはパイ生地で包んだ料理。いまは型で焼いたものやペースト状のものまで、広く指す
  • テリーヌ … もとは陶製の型の名前。型に詰めて蒸し焼きにし、切り分けて食べる

ただし、境目はきっちり引かれているわけではありません。テリーヌはパテの一種とも言えますし、ペースト状のものをパテと呼ぶこともあります。店や料理人によって呼び方が揺れることがあるのも、言葉の成り立ちを考えれば無理のないことだと思います。

迷ったときは、口当たりで見分けてみてください。なめらかに塗り広げるならリエット、四角く切り分けられていればテリーヌ。その間に広がっているのがパテ、という見方もできます。

私たちのコースの皿から

私たちのコースでも、この種類の料理をたびたびお出ししてきました。どれも季節の食材から形を決めているので、呼び名も一皿ごとに違います。

春に信州サーモンの燻製を使ったときは、リエットにして冷たい前菜の一皿にしました。二〇二五年のことです。崩して食べていただけるよう、素焼きのカダイフ(中東で使われる食材です)を上に重ねています。皿のまわりの粉は、ハーブや生姜、焦がしネギの香りをオイルに移し、それを粉末にしたものでした。

夏から秋へ移るころの子持ち鮎は、年によってリエットにも、パテにもしてきました。ある年は、身を香味野菜と炒めてベシャメルや乳製品と合わせ、なめらかにしてから、外しておいた卵を最後に戻しています。同じ魚でも、合わせるものと仕立て方で呼び名が変わる。言葉の境目のゆるさを、厨房でも感じる場面です。

晩秋のアミューズでは、パテ・ド・カンパーニュにフランボワーズのピューレをまとわせたことがあります。古典的な料理を、今の感覚でアレンジした一皿です。山の肉のパテは、山葡萄のゼリーで包んだ年も、ルバーブと赤ワインのジュレで覆った年もあります。

古典の型を借りながら、中に入れるものは信州の季節に任せる。メリ・メロだから、この組み合わせになる。

お品書きで見かけたら

リエットも、パテも、テリーヌも、時間をかけて仕込んでおく料理です。お皿の上では小さな一品でも、その前に煮込む、詰める、冷ますといった手間が重なっています。名前に気づいたら、何の素材で作ったのかをたずねてみるのも楽しいと思います。

おまかせコースの中身は、その日の入荷を見て決めています。ご紹介したのはいずれも、その時期にお出しした皿です。決まった品書きがあるわけではないので、同じものに出会えるとは限りません。コースの料金はおまかせコースと料金のページで、最近の一皿はシェフの独り言でご覧いただけます。

十一月六日からの冬のあいだは夜のみの営業で、昼はお休みをいただいています。冬の時間帯や、昼の例外の受け方は営業時間とアクセスをご確認ください。食べられないものやアレルギーがある方は、予約の段階で必ずお伝えください。当日のコース変更はお受けしていません。

※ 参照した辞書:コトバンク掲載の小学館『デジタル大辞泉』(リエット・パテ・テリーヌの項)、平凡社『改訂新版 世界大百科事典』、講談社『和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典』。二〇二六年十一月に閲覧。

コラムの一覧へ

今日はどんな信州に出会えるだろう。

料理だけではなく、季節を味わう。
メリ・メロで過ごす時間が、信州の自然との新しい出会いになりますように。

↑
電話する アクセス ご予約